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日替わりコメント写真集

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「じゅぽんのつぶやき」『五話』

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第五話

前回までのあらすじ

「じゅぽん」という、小狸がつぶやく、一家と「樹囁庵」の物語。

 じっちゃんは、人間の車に轢かれて、大怪我を負い不自由な生活と年の所為で、次第に体が弱ってきた。親父は、最後の親孝行とばかりに、無理を承知で、じっちゃんとばっちゃんの思い出深い出会いの場所、「クリノキサコ」に案内する。ところが、じっちゃんは、皆と一緒に帰られなくなり、一晩、そこに泊まることになった。
昔の思い出に耽っていたようだ。同じ頃、「桂ケ森」に帰っていた「じゅぽん」も、親父が聞かせてくれた「じっちゃん」の若き日の活躍を、床に入って回想していた。

第五話
 そう言えば、この話をしてくれた親父は、酒の所為だけでなく、異常に興奮してましたよ。

「サブロウ」こと、じっちゃんは、「明神」の長老に頼まれて、「桂ケ森」の連中を引き連れて、狐の一族との、戦いの準備にとりかかる。その夜、主だった面々を集めて、「サブ」は、てきぱきと指示を出した。
 「いいか、今度の戦いは、大事なんじゃ。皆もわしの言うことを良く聞いて、準備に掛かってくれよ」面々の顔を一人づつ、口元には笑みをたたえていたが、その眼光には、並々ならぬ威厳が漂っていた。狭い巣穴の中は、面々達の熱気でむせ返っていたのだそうです。
 「上組は、すまんが、ススキの穂を出来るだけ多く、取って来てくれんかのー」。
「中組は、人間どもが、投げ捨てていった空き缶を集めてくれよ、そうさなー、百個ばかりも有ればいいかのー」
「そして、下組は、油じゃ。出来れば食用油がいいんじゃがのー」そして最後に「南組は、蜂蜜を少々、用意してくれんかのー」と、それぞれに頼み込んでいったそうです。なにをどう使うというのかは一切言わずに、又面々も詳しく聞こううとはしなかったようです。こうして、面々に指図をしてから、皆にお酒をふるまったそうです。

外は、晩秋の風が、枯れ葉をかさかさと、転がしている音がしていたようです。皆は、ご機嫌になり、しばらくして、指示を確かめあって、帰っていったようでした。

二日後の約束の夜、夫々は言われたとおりの品物を持って「サブロウ」の巣に集まった。
「サブロウ」は、昼間、竹の小枝を沢山取って来ていた、それと、藁を縄にして、一抱えも用意していた。
竹の小枝は、40センチくらいに切り、50本も用意し、先は、2cmくらい枝を残していた。
「いいか、すまんが、その竹を四本づつ一まとめにして、縄を結んでくれや」と指図した。
丁度神社の注連縄のように、竹がぶら下がってつけられて行った。
 「おう、出来たのー」「それから、その竹に、空き缶を付けてくれ」
ガランガラン音を立てながら手際よく、取り付けられた。
「次は、ススキじゃ。束ねて、わしらの尻尾の大きさにしてくれ」サブは、次々と命令した。
 
 上組の若い者が「こんなもの作って、なんに使うんで・・・・」と口を挟んだ、
「えーい、お前らに説明しとる暇はないんじゃ」
「黙って言うた通りにせい」と一喝した。
こうして、訳の分からぬ間に準備は、仕上がったようです。


で、この続きは、第六話でつぶやくことにいたします。





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